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内藤鳴雪俳句抄録 松浦為王選択 木子編集

自叙伝① 自叙伝② 自叙伝③ 自叙伝④ 自叙伝⑤ 自叙伝⑥ 俳句
区切りを入れたが、不都合があれば知らせてください。


新年の部
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元日や 一系の天子 不二の山
六日はや 睦月は古りぬ 雨と風
朝拝や 春は曙 一の人
輪飾や 吾は借家の 第一号
輪飾の 低うかゝりし 戸口かな
打ちつれて 夜の年賀や 婿娘
万歳や 古き千代田の 門柱
万歳の 鼓を炙る 竈かな
妻猿の 舞はですねたる 一日かな
春駒や 美人もすなる 物貰ひ
鞠唄や 妹が日南の 二三尺
から/\と 切凧走る 河原かな
藪入の 昼寝もしたり 南縁
きぬ/″\や 薺に叩き 起されつ

病中新年
寝て聞けば 知る声々の 御慶かな

子規を訪ひて
病む人も 頭もたぐる 御慶かな
内藤鳴雪俳句抄録 松浦為王選択 木子編集_d0007589_1449397.jpg

春の部

初東風や 富士に筋 違ふ凧
仙人や 霞を吸ひて 寝つ起つ
道尽きて 松明振るや 雪解川
春雨や 酒を断ちたる 昨日今日
春雨に 杉苗育つ 小山哉
浅茅生の 宿と答へて 朧月
朧夜の 雨となりけり 渡月橋
小蔀に 人のけはひや 春の月
片側に 雪積む屋根や 春の月
陽炎や 石の八陣 潮落ちて
陽炎や 掘り出す石に 温泉の匂ひ
桶に浮く 丸き氷や 水ぬるむ
子鴉や 苗代水の 羽づくろひ
春寒の 白粉 解くや掌
梅ちりて 鶴の子寒き 二月かな
永き日や 花の初瀬の 堂めぐり
伐り出す 木曾の檜の 日永かな
寒食の 膳棚に吹く 嵐かな
掃き溜の 草も弥生の けしき哉
陀羅尼品 春の日脚の 傾きぬ
暖かや かちん汗かく 重の内
脱ぎ捨てし 人の晴着や 宵の春
春の夜の 鳩のうめきや 絵天井
行春の 鴉啼くなり 女人堂
夏近き 吊手拭の そよぎかな
山畑は 月にも打つや 真間の里
銃提げて 焼野の煙 踏み越ゆる
摘草の 約あり淀の 小橋まで
一畑は 接木ばかりの 昼淋し
文使を 待たせて菊の 根分かな
乞食の 子も孫もある 彼岸哉
踏青や 裏戸出づれば 桂川
古雛の 衣や薄き 夜の市
盃の 花押し分けて 流れけり
堀止めの こゝも潮干や 鰌掘り
出代りて 此処に小梅の 茶見世かな
涅槃繪の 下に物縫ふ 比丘尼哉
曇る日や 深く沈みし 種俵
衣桁にも 這ふ蚕に宮の 御笑ひ
行雁や 射よげに飛んで 那須の原
あちこちと 鶯飛ぶよ 芝広し
鶯や 折り焚く柴に 夜を啼く
二羽打ちて 啼かずなりたる 雉子哉
柳鮠 かき消すごとく 散りにけり
汁椀に 大蛤の 一つかな
雲雀落つ 影も夕日の 田毎哉
子雲雀や 比叡山おろし 起ちかぬる
苗代の 水の浅さよ 蛙の背
野の梅や 折らんとすれば 牛の声
垣越えて 梅折る人や 明屋敷
夕日や 納屋も厩も 梅の影
灯ともして 夜行く人や 梅の中
荷車の 柳曳きずる 埃かな
うたゝ寝の 覚むれば[#「覚むれば」は底本では「覧むれば」]桃の 日落ちたり
奈良坂や 桜に憩ふ 油売
さくら折つて 墓打ちたゝく 狂女かな
北面に 歌召されけり 梨の花
足伸べて 菜の花なぶる 野茶屋哉
菜の花の 行きどまりなり 法隆寺
躑躅ぬけば 石ころ/\と 転がるよ
京都へ 嫁入る 女子に (こにし注453)
暖き加茂の 流れも 汲み習へ
亡児惟 行が記念の 帛紗に
為山が 藤の花 画きたれば
行き行きて 行くこの春の 形見かな

夏の部

大刀根の 泡や流れて 雲の峰
池に落ちて 水雷の 咽びかな
夕立や 石吹き落す 六合目
五月雨や 蓑笠集ふ 青砥殿
五月雨の 合羽すれあふ 大手かな
蓑を着て 河内通ひや 夏の雨
清水ある 家の施薬や 健胃散
雨雲の 摩耶を離れぬ 卯月かな
大沼や 蘆を離るゝ 五月雲
短夜や 蓬の上の 二十日月
短夜の 麓に余吾の 海白し
午睡さめて 尻に夕日の 暑さかな
涼しさや 月に経よむ 一の尼
更へ/\て 我が世は古りし 衣かな
新茶煮て この緑陰の 石を掃ふ
矢車に 朝風強き 幟かな
灌仏や はや黒々と 痩せ給ふ
大団扇 祭の稚児を あふぎけり
滝殿に 人ある様や 灯一つ
折り/\は 滝も浴み来て 夏書かな
蓬生の 垣に蚊遣す 女かな
古庵や 草に捨てたる 竹婦人
百の井に 掘りて水なし 雨を乞ふ
一杓は 我も飲みつゝ 打つ水よ
波立てゝ 持ち来る鉢や 冷奴
時鳥 左近の陣の 弓の数
月がさす 厠の窓や 時鳥
貰ひ来る 茶碗の中の 金魚かな
老い鳥や 己が抜羽を 顧る
古御所の 蓬にまじり 牡丹かな
荒れ寺や 塔を残して 麦畑
萍の泥に たゞよふ 旱かな
一八の 東海道も 戸塚かな
下闇を 出づれば鶏の 八つ下り
玉葛の 花ともいはず 刈り干しぬ

秋の部

聴衆は 稲妻あびて 辻講義
朝露や 矢文を拾ふ 草の中
暁や 鐘つき居れば 初嵐
我声の 吹き戻さるゝ 野分かな
税苛し 莨畑の 秋の風
三日月や 仏恋しき 草枕
三日月に 女ばかりの 端居かな
月の船 琵琶抱く人の あらはなり
横雲や いざよふ月の 芝の海
古妻の 昔を語る 月夜かな
空家に 下駄で上るや 秋の雨
初潮を 汲む青楼の 釣瓶かな
山の井や我顔うつる秋の水
提灯で 見るや夜寒の 九品仏
山越や 馬も夜寒の 胴ぶるひ
堂島や 二百十日の 辻の人
我が描きし 絵に泣く人や 秋の暮
行秋の 石より硬し 十団子
下京や 留守の戸叩く 秋の暮
七夕を 寝てしまひけり 小傾城
押し立てゝ はや散る笹の 色紙哉
呼びつれて 星迎へ女や 小磯まで
屋根越しに 僅かに見ゆる 花火かな
小袴の 股立とつて 相撲かな
小角力の 水打つて居る 門辺かな
魂棚の 前に飯喰ふ 子供かな
草分けて 犬の墓にも 詣でけり
墓拝む 後ろに高き 芒かな
草市の 立つ夜となりて 風多し
通夜の窓 ことり/\と 添水かな
提げて行く 燈籠濡れけり 傘の下
酔顔の 況や廻 燈籠かな
踊るべく 人集まりぬ 月の辻
月ももり 雨も漏りしを 蚊帳の果
つゞくりの 遂に破れて 秋の蚊帳
巻きかへて 又打ち出だす 砧かな
摂待に 女具したる 法師かな
鳩笛も 吹きならひけり 湯治人
吹くうちに 鳩居ずなりぬ 野の曇り
綿取りに 金剛山の 道問ひぬ
山宿や 軒端に注ぐ 落し水
豹と[#「豹と」は底本では「豺と」]呼んで 大いなる蚊の 残りたる
桟橋に 舟虫散るよ 小提灯
蜩や 千賀の潮竈 潮さして
宵闇や 鹿に行き逢ふ 奈良の町
初雁や 襟かき合す 五衣
眼白籠 抱いて裏山 歩きけり
大寺の 屋根に落ちたる 一葉かな
したゝかに 雨だれ落つる 芭蕉哉
芭蕉破れて 雨風多き 夜となりぬ
灯ともせば 只白菊の 白かりし
萱原に ねぢけて咲ける 桔梗かな
いさかひは 木槿の垣の 裏表
夜をこめて 柿のそら価や 本門寺

冬の部

凩の 吹きあるゝ中の 午砲かな
折りくべて 霜湧き出づる 生木かな
初霜を いたゞきつれて 黒木売
もてあます 女力や 雪まろげ
大雪の 谷間に低き 小村かな
月寒し 袈裟打ち被る 山法師
古塚や 冬田の中の 一つ松
萩窪や 野は枯れ果てゝ 牛の声
初冬の 襟にさし込む 旭かな
小春日の 山を見て掃く 二階かな
湖を 抱いて近江の 小春かな
釜に湧く 風邪の施薬や 小春寺
冬の夜や 小犬啼きよる 窓明り
僧定に 入るや豆腐の 氷る時
耳うとき 嫗が雑仕や 冬ごもり
書を積みし 机二つや 冬ごもり
門前の 籾を踏まるゝ 十夜かな
横はる 五尺の榾やちよろ/\火
古蒲団 縄にからげて いた/\し
繕ひて 幾夜の冬や 紙衾
炭焼の 顔洗ひ居る 流れかな
風呂吹の 一切づゝも 一句かな
顔見世や 病に痩せて 菊之丞
寒声は 女なりけり 戻り橋
有明や 鴛鴦の浮寝の あからさま
鮟鱇の 口から下がる 臓腑かな
茶の花を またいで出でつ 墓の道
から/\と 日は吹き暮れつ 冬木立
樹にかけし 提灯一つ 師走かな
大年の 両国通ふ 灯かな
煤掃や 庭に居並ぶ 羅漢達
暁や 見附出づれば 餅の音
忘れけり 四十九年の 何とやら

自叙伝① 自叙伝② 自叙伝③ 自叙伝④ 自叙伝⑤ 自叙伝⑥ 俳句
区切りを入れたが、不都合があれば知らせてください。

by li_japan | 2016-12-17 09:35 | 一俳一会(俳句,漢俳) | Comments(0)
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